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を生み出すようなポンプ、すなわち「メカニカルイオンポンプ」とも呼べるような力学的エネルギーを化学的エネルギーに変換するデバイス技術の実現に期待が持てる。
(3) 化学発光レーザー
化学反応を媒介とするエネルギー変換は種々のものが考えられるが、化学反応を通じて、化学エネルギーが光エネルギーに変換される場合がある。例えば、発熱的な化学反応の一部が電子的励起エネルギーに費やされ、その結果発光が起こる。この反応には電子移動による3つの型の化学発光がある。

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またこれ以外の化学発光の例として過酸化物の分解による場合がある。
ホタルの光はルシフェリンが酵素反応で酸化されるのに伴って発せられる。化学反応が励起分子を生成し、それが発光する過程を一般に“化学発光”(chemiluminescence)という。このように、ある種の化学反応においては、反応に際して放出されるエネルギーが生成分子の特定の運動自由度に分配される。それは熱エネルギーとは異なる。熱は、エネルギーを受け入れ可能な運動自由度に“ランダムに”分配した場合に、系のもつエネルギーの1つの形態である。化学反応では、生成するエネルギーが必ずしも“ランダムに”分配されない。化学発光はその極端な例で、反応エネルギーが直接光に変換されている。この発光を誘導放射として起させたのが“化学レーザー”(chemical laser)である。そのためには、光の電磁波が一方向の定在波となるような共振器の中で化学発光反応を行わせればよい。
化学レーザーを示すものとしては表5−2のものが知られている。表5−2中の連鎖反応で生成するHFはν=2の分布数が最も多い。すると、ν=2→1、ν=1→0振動遷移に相当する赤外線をF+RHの反応気体中を通過させると、光が吸収ではなくて増幅されることになる。その増幅率はきわめて大きい。したがって、この反応系を光の共振器内におけば、レーザー発振が起る。これが化学レーザーである。化学レーザーは、分子励起の効率が高く、逆転分布の程度が大きいため、大出力レーザーとして発展する可能性がある(図5−11)。

 

 

 

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